道具学への招待 vol.87 模造/捏造/創造?-モンゴルの2つのポット

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 私の勤める大学では、モンゴルのゲル1棟とその内部の家財道具一式を所蔵している。その中に、この2つのポット(現地名:ドンボ/Dombo)も含まれている。一見していかにも伝統的と思える木製(写真/左)が新製(展示用の模造品)で、円錐の純粋幾何形態に近い、見方によるとスーパー・モダンな形状の金属製(同/右)が伝世品である。
 このポットは通常、大鍋で一度に大量に作るミルクティーを椀に注ぎ分けるのに使うだけでなく、金属製の場合、ストーブの上に置いておけば保温あるいは再加熱もできる。
 では、模造品と思われる木製ポットはいったい何を「模造」しているのだろう。派手な彩色、紋切り型の「モンゴル的」図像(ラクダ、馬追い、旅行用天幕、仏宝など)をちりばめた彫刻、装飾的な持ち手の造形からすると、これは、外国人にモンゴルの「伝統」を訴求するための創作であるだけでなく、新生モンゴルの新たな伝統の創造/捏造を意図しているようにも思えてくる。

(面矢 慎介 2012/06)

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