道具学への招待 vol.95 ニュルンベルグキッチン

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 わが町の西洋骨董屋のショーウインドウに目が留まった。「1912年 ドイツ製」と書かれたミニチュアの台所が鎮座している。本体側面には「Fra Formoer til Musses 13/8 1912」と書かれた真鍮のプレート。実はデンマーク語でMussesからFormoerへという意味だった。
 ドイツのニュルンベルグは中世から木工技術を生かしてドールハウス(人形の家)を世界に輸出。中でも「ニュルンベルグキッチン」と言われる台所のミニチュアは有名。きっとこれも裕福なデンマーク人がプレゼント用に発注したものであろう。
 この台所は当然ながら全てが約1/10の縮尺世界。缶詰や酒壜のラベルまで印刷しているのは驚きだ。その上、シンクの水栓を捻ると水が流れ、玄関ドアの呼び鈴が鳴り、壁の照明が点灯する。まさに20世紀初頭の夢の台所なのだ。一体どんなお嬢様が遊んだのか。それともパイプ片手に紳士が眺めていたのか。そんな想像をしながらグラスを傾けるのも悪くない。しかし価格を見て早々に退散と相成った。

(大沢匠 2013/02)

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