道具学への招待 vol.114 夏の名称、冬の利用

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 仕事柄、ストーブをはじめとした火を使う道具に接する機会が多いのですが、今回紹介する製品のように、なかには首をかしげてしまう用途の道具に出合うことがあります。
 ストーブの前にあるガードに吊り下げるこの製品は、陶球の中にお香(煉り香)を入れ、ストーブの熱源に近づけて陶球を熱し、立ちのぼる香りを楽しむものです。
 暖房器具が電気やガス、石油を燃料とするストーブに切り替わり、炭や火鉢が身のまわりから姿を消した中でも、お香を手軽に楽しんでもらえるよう、お香を扱う「鳩居堂」自らが実用新案を取得して販売した製品です。戦後の新しい生活様式の中に、「お香」がどのようにしたら溶け込めるか、その試行錯誤が見て取れます。
 製品名称の「釣りしのぶ」は、ストーブの前にお香の入った陶球を吊り下げる姿から、形作った水苔に水を浸して植物をいけ、軒先に吊り下げる夏の風物詩である「釣り忍」に由来しています。

(高橋豊 2014/09)

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