道具学への招待 vol.117 「灯台」アルジェリア、カビリー地方

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 アルジェリアは1962年、フランス植民地から共和国として独立した。アラビア語を公用語としたが、7世紀以後の新来民アラブへの文化的同化を拒否する北アフリカの先住民アマジグ人の抵抗の結果、2002年の憲法改正によって、アマジグ語は「国民語」として認められた。アルジェリアの首都アルジェの東方にひろがるカビリー山地は、北アフリカの先住民アマジグ人の居住地で、独自の生活文化が営まれている。
 この彩色土器の灯台は、1969年7月、筆者夫婦が、アルジェでのアフリカ文化祭に参加したあとの北アフリカ旅行(中公新書『マグレブ紀行』1971、復刻版1999参照)のとき、カビリー山地のアマジグ人の村で入手した。この地方の研究をしていた、旧知の文化人類学者宮治美江子さんが、馴染みのTizi-Hibel村に私たちを案内してくれたとき、村の陶工の女性から買ったものだ。
 当時この村では、日用の照明は石油ランプだった。その前の時代の多彩色土器で作ったロウソクの「燭台」は、結婚式のお祝いなどにまだ使われていたが、この写真のような、さらにそれ以前の、オリーヴ油に綿糸の灯心を浸した灯台は、すでに遠い記憶のなかの道具になっていたようだ。
 宮治さんに伺ったところでは、私たちが訪ねた翌年、この村に水道が引かれ、1971年には電気が通じるようになった。アマジグ土器の様式で作られた、なかなか手の込んだこのコケットな灯台は、私たちが入手した時点ですでに、村人にとっても、「文化遺産」になっていたのだ。
(川田順造 2014/12)

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