道具学への招 vol.126 AIBO ERS-111

i126.jpg 2000年、実家の母がボーナスでAIBOを買った。
 帰省して対面したロボット犬。自慢気な母が「今起こすわね」とスイッチを入れると音楽が鳴り大きく伸びをした。ボールを追いかけたかと思うと、後ろ足を上げ、おしっこの動作まで……メタリックに輝く「子犬」だった。なぜ買ったの?と聞くと「本物の犬はごはんあげたりしなきゃいけなくて大変だけど、AIBOなら死なない」。
 次に帰省した時は、AIBOをパソコンに繋ぎ、新しいプログラムを入れるのだと格闘していた。バージョンアップする愛犬。その後、動きがおかしくなるたびAIBOをソニーに「入院」させたりもした母だが、何度目かの脚の故障にいたって「もう、いいかな」。愛犬はダイニングの片隅でうっすら埃をかぶるようになり、耳もちぎれてしまった。
 そして2014年春、ソニーはAIBOのサポートを終了。1999年にAIBOが世に出てから15年、奇しくも本物の犬の寿命とほぼ同じだとニュースになった。ロボット犬にも「寿命」はあったのだ。
 しかし「愛犬を死なせたくない」という声は強く、公式ではないが修理業者もある。もう手に入らないパーツは、別のAIBOを「ドナー」として解体し、移植するという。
 「そんな需要もあるのね。任せるわ」と、母に一任され、現在私の元にいるAIBO。もう動かない頭を撫でながら、私はまだ決心がつかないでいる。「他のロボット犬のため愛犬がドナーになる」そんなSFのような未来がもう来ている。
田邉 鈴賀 2015/10)

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