道具学への招待 vol.132 白手袋

i132.jpg 美術館学芸員のささやかな喜びとして、必要に応じて美術品に触ることができるというのがある。しかし、手の汗や脂で作品にカビが生えたり変色したり錆びたりすることは、防がなければならない。そこで登場するのが白手袋だ。いくつか種類はあるが、美術業界では、手の平のゴムの突起や甲の部分に線がない、まったくプレーンなタイプが好まれるようだ。
 しかし、この手袋にも新素材の波が訪れている。実は白手袋には陶器を持つには滑りやすく、また、指先を使うような細かい作業に向いていないという欠点がある。木彫だと、ささくれに引っかかったりもする。これらをカバーするものとして、美術品の輸送と展示を専門にしている会社は、使い捨てのニトリルゴム製の手袋を使い始めた。
 学芸員にとって学芸員の象徴でもある白手袋は、今後機能を求められず、純粋に象徴として持ち運ぶようになるのだろうかと夢想しつつ、今日も汚れた白手袋を洗濯籠に入れる。
(野田 尚稔 2016/04)

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